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秋の表現

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秋の表現をいろいろなところから集めてみました。随時更新していきます。 

ススキ 

ススキの穂も立ち始め、夏の頃とは大分空気の質も変わってきたのが分かる。虫の声もいよいよ姦しくなった。『家守綺譚』梨木香歩

十五夜なので、ススキなど採ってくる。縁台に、床の間から持ってきた口の欠けた花瓶を置きススキを挿しておく。これだけでも風流の心もちがするのだから、大したものだ。『家守綺譚』梨木香歩

秋の空は高く、遠くで子どもが遊ぶ声がする。吹く風は心地よく思わずまどろみそうになる。『家守綺譚』梨木香歩

吹きくる風に一筋の冷たい線が混じっている。初秋と呼ばれる季節になったのだ。空が高い。雲が薄い。涼しい鈴の音が、チリンと響いてくるのは、どこかの軒下に吊るされている、夏の名残の風鈴だろうか。『家守綺譚』梨木香歩

広田は、世界でいちばん美しいといわれる北京の秋空に立った。群青色の空は高く、大気は澄み切って、若い外交官の心をとらえる。『落日燃ゆ』城山三郎

澄んだ空に白い雲がひとひら、陽に輝いて浮かんでいる。『塩狩峠』三浦綾子

薄青い天にさっと刷毛ではいたような雲が浮かんでいる。秋の陽射しは淡く澄んで、草原にしつらえられた大天幕を白く浮かび上がらせていた。『鹿の王』上橋菜穂子

空の色が段々変わってくる。ただ単調に澄んでいたものの中に、色が幾通りも出来てきた。透き徹る藍の地が消える様に次第に薄くなる。その上に白い雲が鈍く重なりかかる。重なったものが溶けて流れ出す。何処で地が尽きて、何処で雲が始まるか分からないほどに物憂い上を、心持黄な色がふうと一面にかかっている。『三四郎』夏目漱石

とんぼ

辻々に茜とんぼが舞っている。幸い、入京のこの日は前夜来の雨があがり、はるか西山の空は群青の濃をつくったように晴れている。『峠 上』司馬遼太郎

白い雲が大きな空を渡っている。空は限りなく晴れて、どこまでも青く澄んでいる上を、綿の光ったような濃い雲がしきりに飛んで行く。風の力が烈しいと見えて、雲の端が吹き散らされると、青い血が透いて見える程に薄くなる。あるいは吹き散らされながら、塊まって、白く柔らかな針を集めた様に、ささくれ立つ。『三四郎』夏目漱石

日差し

静かな、秋の午前。日差しの柔らかな秋の庭。『斜陽』太宰治 

南天

宿の女中と二人で布団を釣橋の上に干している。黒く塗った橋板の上で揺れている円い彼女らは私の病める秋の上に落ちた赤い南天のようだ。合歓木(ねむのき)の梢に花の跡が残っている。常山木(こくさぎ)は花を持ったまま一葉二葉が黄ばんでいる。桜の葉も色づき初めている。『白い満月』川端康成 

別荘の柴折戸を開くと、南天の枝から雨蛙が私の肩に飛び移った。二月ぶりで開く雨戸から早瀬の音が流れ込んだ。川原の石が秋の肌らしく白くなっていた。柱や雨戸が瘦せていた。鮎はもう海に下っていくのだろう。夏よりも湯の匂いが強い。『白い満月』川端康成

月 

いつか、西片町のおうちの奥庭で、秋のはじめの月のいい夜であったが、私はお母さまと二人でお池の端のあずまやで、お月見をして、狐の嫁入りと舅の嫁入りとは、お嫁のお支度がどう違うか、など笑いながら話し合っているうちに、お母さまは、つとお立ちになってあずまやの傍の萩の白い間から、もっとあざやかに白いお顔をお出しになって、少し笑って、「かず子や、お母さまがいま何をなさっているか、あててごらん」とおっしゃった。『斜陽』太宰治

紅葉 

赤や黄に色を変えた葉が、水面を錦のように彩った。『鹿の王』上橋菜穂子

秋の野山の空気は格別である。ことに木々の中に松が入っていると、清新の気が鋭さを増し、心地よい。『家守綺譚』梨木香歩

この茶道好きの男は、山道の途中に足をとどめてまわりの樹々を見まわした。天王山の南面は落葉樹が多く、かえで、ぬるで、はぜが濃淡それぞれに色づき、樹にからむ蔦まで紅葉しはじめている。『新史 太閤記 下』司馬遼太郎

野に、秋の色が深くなっている。『国盗り物語 3』司馬遼太郎

いつか、あれは秋の夕暮れだったと覚えていますが、私とお母さまでその師匠さんの家の前を通り過ぎた時、そのお方がお一人でぼんやりお宅の門の傍に立っていらして、お母さまが自動車の窓からちょっと師匠さんに会釈なさったら、その師匠さんの気難しそうな蒼黒いお顔が、ぱっと紅葉よりも赤くなりました。『斜陽』太宰治

秋の日は鏡の様に濁った池の上に落ちた。中に小さな島がある。島にはただ二本の樹が生えている。青い松と薄い紅葉が具合よく枝を交し合って、箱庭の趣がある。『三四郎』

風  

日暮れの迫った原っぱには、肌寒い風が吹いていた。草の先は勢いをなくし、夏の面影はもうどこにもない。だれも採るもののない柿の実が、夕日と同じ色をして揺れている。『風が強く吹いている』三浦しをん 

私の胸にふうっと、父上と那須野をドライヴして、そうして途中で降りて、その時の秋の野の景色が浮かんできた。萩、なでしこ、りんどう、女郎花などの秋の草花が咲いていた。野葡萄の実は、まだ青かった。『斜陽』太宰治

星 

残暑は去り、空気は乾いて透き通り、中庭に射す母屋の影の形も、木立の葉の色合も真夏とは違っていた。光はまだそこかしこにあふれているのに、一番星と月がひっそりと浮かび、雲が刻々と姿を変えていた。『博士の愛した数式』小川洋子

晩には神楽坂の縁日へ出かけて、秋草を二鉢三鉢買ってきて、露の下りる軒の外へ並べて置いた。夜は深く空は高かった。星の色は濃く繁く光った。『それから』夏目漱石

寒さ 

その頃は日の詰まって行くせわしない秋に、誰も注意を惹かれる肌寒の季節であった『こころ』夏目漱石

大根 

二人の足の下には小さな河が流れている。秋になって水が落ちたから浅い。角の出た石の上に鶺鴒(せきれい)が一羽とまった位である。三四郎は水の中を眺めていた。水が次第に濁ってくる。見ると河上で百姓が大根を洗っていた。『三四郎』夏目漱石

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