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失敗や負けは人生の糧となる 『負けを生かす極意』野村克也

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 厳しく知的な方。野球を知らないわたしも読み入ってしまいます。野球理論の本ではなく人間教育論です。野球を通して具体的、実践的に人間を語っています。

 引用ばかりになりますが、すみません。

 失敗について

 練習で100回中99回は取れるボール。その残りの一回が大事な場面で来るときがある。人間は悲しいかな、失敗や負けを経験して初めて自分の間違いやいたらなさに気づく。壁にぶつかって、にっちもさっちもいかなくなって、ようやく弱点や短所を真剣に克服しようという気が起きる。失敗し、負けたからこそ「何が足りなかったのか」と疑問を抱き、修正しようと考える。気合や根性などの精神論だけでは乗り越えられない壁にぶつかるからこそ、知恵を絞り「こうすればうまくいくのではないか」と試行錯誤する中で、本当の実力を身に付けていく。失敗や負けは過信やうぬぼれをいましめ、謙虚さや素直さを教えてくれる。「自分はまだまだ」と思うことで、技術だけではなく、人間的にも成長していく。さらに、失敗や負けを経験すれば、おのずと慎重かつ繊細な姿勢で取り組めるようになる。

 WBCの敗戦につながった田中や松田のファンブルをあげて、こう解説しています。「田中や松田が素晴らしい選手である」ということ、「野球にミスはつきものゆえに、このミスによって彼らの選手としての価値が下がることはない」ということをふまえた上での言及です。よくやりましたよ。田中も松田も。グッドジョブでした。

 身だしなみについて

 「身だしなみまで監督が注意する必要があるのか」と疑問に思う人もいるかもしれないが、おおいにある。考えてもみてほしい。一般企業に勤めている人で、金髪で胸元にネックレスをチャラチャラさせている人などいるだろうか。私は会社勤めをした経験はないが、昔、企業の講演会などで社員の皆さんを前に講演した時には、頭は黒髪できちんとしたスーツを着た人しかいなかった。それが当たり前なのだ。中田のような身だしなみをするのは、昼間の仕事ではなく、夜の水商売に従事する人と同じではないだろうか。

 ある心理学者によると、茶髪や金髪にしたがる若者の心理は「自己顕示欲」なのだという。しかし、私に言わせれば茶髪や金髪は個性ではない。簡単に誰でも真似できてしまうからだ。だから「茶髪や金髪のような意味のないことはするな」とルールを作り、チームを預かる監督が決めたルールに選手を従わせる。それによって選手は成長していくし、選手が成長しなければ、チームは強くならない。感情的な起用法は、選手にとってマイナスでしかない。

 野村さんの本をよく読みます。その言葉は重く、説得力があります。もう80過ぎですが、今はやりの「アラハン本」とは全く違います。どこかで聞いたことがある、こすられ倒されたふわっとした言葉が大きな字で書いてあるわけでなし、老いや死について書かれているわけでなし。ひたすら野球を通し、野球を人間を緊張感を漂わせながら語る。 

yama-mikasa.hatenablog.com

 一芸に秀でた突き抜けた方です。尊敬します。