読書生活 think it over

本や新聞を読んでいます

『とっさのひと言で心に刺さるコメント術』 おちまさと

 「コメント術」ですから話し方の本ですが、おちさん自身は「相手にしゃべらせることが第一で、そのためには質問力を磨きましょう」と言います。そして、質問力を高めるための本を出しました。しかし、その読者からこんな感想をいただいたと。

 「質問したら『君ならどう答える?』と逆に質問されてパニックになった」と話してくれた人がいました。なるほど、質問と答えはコインの表裏。いつ立場がひっくり返るかわかりません。油断は禁物。突然の逆転劇にも備える必要はありそうです

 ただ、基本はやはり相手に話させることですから、長めの「話術」ではなく短い「コメント術」なのでしょう。

 「こんなコメントをしよう」というより「こういう姿勢でいよう」という部分に多くの字数がさかれています。

 一言でいい。しゃべりすぎるな!

 基本的にみんな自分語りが大好きで、特にネット上では驚くほど雄弁に自分のことを語っている人が多いことには目を見はるものがあります。「わたしはこういう人間だ」「昨日これを買った」「心が落ち込んだ」「ほんと忙しい」…。これは僕に言わせればコメントになっていません。自己分析には多くの時間とエネルギー、文字数を割けても他者や世の中の出来事については押し黙ったまま

 耳が痛い(涙)。次です。

 「感じた」だけでは言葉にならない

 「無茶ぶりっすよー」の逃げ口上ではコメント力は上がらない

 最初からうまいことを言おうと思わない

 知識をひけらかすのはコメントじゃない

 全部、耳が痛い!いいコメントをストックして出そうというのではなく、こういうことは言わないようにしよう、と考えることが大切だと言います。決め打ちはよくないと。打率より打数だとも。

 ただ、この本でおちさんが出しているコメント例が秀逸なので、紹介します。おちさんは、こんなシチュエーションの場ではこういうコメントをしたらどうですか?というスタンスで説明していますから、コメント例だけ抜き書きしたらおちさんに怒られそうですが…。

「ずっとファンでした。感動しました」ではなく、「最初にいきなりあの曲をもってくるとは、意外でしたね」

 そもそも、どういうシチュエーションだと、こんなコメントを言う場がわたしたちにあるのか、というツッコミの声も聞こえそうですが。応用できそうな気がしませんか?

「今思いついたんですけど」の枕詞でハードルを下げる

 常識ある社会人なら、謙虚にへりくだる人間に対して「じゃあしゃべるなよ」などと意地の悪いツッコミは入れたりしないはず、とおちさんは言っています。

気弱な部下のプレゼンに、「いいね!」と即答する

 自信がついて、部下がぐんぐん育つらしいです。

「これ、よかったら読んでください」ではなく、「つまらなかったら捨てちゃってください」でもなく、「これ、お荷物になりますが」

 おちさんは対談相手に本を渡すことがよくあるとのことです。そういうときに、どのような言葉を添えたらいいか悩んでいたけど、今これに定着しつつあるそうです。「これ、よかったら~」が素直な気持ちだけどストレートすぎる。「つまらなかったら~」では卑屈でかえっていやらしい、とのこと。

「わかります」「ぼくもそう思います」ではなく、「たしかに!」

 相手に同意するときどう言うか。「わかります」や「そう思います」は適当で不遜なコメントだと。「たしかに」には同意だけでなく、感動のニュアンスが含まれる、と。たしかに。

 上手かどうかはわかりませんが、その人の口癖ってありますよね。わたしが印象に残っているものは、田原総一郎さんが「朝まで生テレビ」でよく使っていた

「わたしは頭が悪いんで、おっしゃっていることが難しくてよくわからない。わたしのような頭の悪い人間にも理解できるように、最初にイエスかノーか言っていただけませんか?」

というセリフです。田原さんは、有力政治家などの本音を引き出す際に、肝心なところでこのセリフをよく使い、相手の本音を吐かせていました。うまいものでした。わたしも、仕事で小さい会議の司会などをするときにはよく使いました。経験上、本音を引き出すということに加えて、停滞した議論を強引に二項対立的な問題設定にすることで、論点を整理し活発にさせる効果もありました。

 ただ、使い方に注意が必要です。さきほど、「今思いついたんですけど」のコメントで、常識ある社会人なら、謙虚にへりくだる人間に対して「じゃあしゃべるなよ」などと意地の悪いツッコミは入れたりしないはず、とおちさんは言っていましたが、そうとは限りません。

 討論番組で「わたしよくわからないんですぅ」と言ったアイドル時代の小倉優子さんが、ビートたけしに「ばかは出ていけ!」と一喝されるというショッキングな映像をテレビで見たことがあります。なぜ、ゆうこりんがそんな番組に出ていたのかはわかりませんが、こわいおじさんはどこにでもいるということは覚えておいた方がよさそうです。