読書生活 

本や新聞を読んでいます

日体大と国士館

この記事をシェアする

 わたしには、日体大と国士館を出ている先輩がいます。ばりばりの体育会系の50代です。一人は温厚なおじさまで、一人は瞬間湯沸かし器のようなおじさまです。

 このお二方、ともに両大学を代表するすさまじい寮に入っていたという経歴があります。どちらとも、まさに男塾真っ青のような寮だったそうで、わたしは聞いていてびっくりしました。

 以下、温厚なおじさまから聞いた寮の話です。

 早朝太鼓が鳴り響き、全員起床し部屋の前に整列します。一人でも欠けていたら大変なことになります。1年生は上級生の付き人となり、上級生は寮内では神とあがめたてまつられます。

 自動ドア、自動肉体洗浄、という言葉があります。上級生はどのドアも自分で開けません。付き人の1年生がぴたりとはりつき、上級生の進行方向にあるドアを開けます。お風呂もそうで、上級生が裸になり浴場の扉の前に立つと、1年生も急いで裸になりその扉を開けます。上級生が浴場内のいすに座ると、その背中にそっと1年生が湯をかけ流します。出るときも同様です。

 夏になると、その大学伝統の踊りを寮の前の運動場で永遠に踊り続ける特訓があります。全力で永遠に続きます。倒れたい、と皆が思うのですが、倒れると、これまた上級生がすっとんできて天誅を食らわせてくれます。

 掃除、洗濯もすべて1年生の仕事で、冬の雨の日に上級生の洗濯物が乾かず、こたつにずっと入れて乾かしたところ、「くさい」と殴られます。

 笑える話ではないようで、何人かはノイローゼになったり、中には失踪する人までいるようです。逃げ出しても大学で顔をあわせることになり、どこまでいっても逃げられない、という雰囲気があるそうです。

 一方、瞬間湯沸かし器のおじさまの寮も同じようだったと言います。このお二方同士は面識がありません。日体大と国士館はお互いをライバル視していて、キャンパスも近くいざこざが絶えなかった、と瞬間湯沸かし器のおじさまから聞きました。

 ここまで読めば、わかる人にはどちらがどちらの大学を出ているのかわかりますが、あえて、名前は出しません。

 瞬間湯沸かし器のおじさまは、その寮から逃げ出さず4年間いたことを誇りに思っていると飲みながら教えてくれました。電話の応対や人に接する際の礼儀など、大事なことをその4年間で学んだ、とおっしゃっていました。この方、いい人ですが怖いんですよ。

 一方、温厚なおじさまは、1年生が終わる3月末に退寮したと聞きました。理由を聞くと、

「2年生になると、付き人がつくんです。だから、それまでの辛抱だとがんばる人がいることも事実です。でも、ぼくはこのシステムが大嫌いだったんです。自分が残ったら、こんな馬鹿げた習慣が続くことに加担することになります。残って改革する、という案もあったのですが、あの寮はOBも多く絶対に変わりません。だから、1年間修行だと思ってがんばって、1年が終わったら出ていくと決めたんです」

と恥ずかしそうに教えてくれました。かっこいい。本当にすてきな人なのです。