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日本の新生に先駆けて散る 『戦艦大和の最期』吉田満

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 吉村昭の『戦艦武蔵』を読み、続いて大和関係の本を何冊か読みました。

 大和の沖縄出動に動員された青年士官たちは、自分たちが戦略的に無意味な死に向かっていることに苦しみ、こうやって死ぬことに一体何の意味があるのかについて、士官室で激しい論争をしました。この論争を一人の海軍大尉がこう語って収拾したと書かれています。

「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。日本は進歩ということを軽んじすぎた。私的な潔癖や徳義にこだわって、本当の進歩を忘れていた。敗れて目覚める、それ以外にどうして日本が救われるか。俺たちはその先導になるのだ。日本の新生に先駆けて散る、まさに本望じゃないか」

 本来はカタカナ表記ですが、読みやすくするためひらがなにしました。

 太平洋戦争については、彼らは何のために死んだのか、その死が何を意味するのかについて、わたしたちはまだ答えを得ていません。

 ある人から見れば、「護国の英霊」であり、ある人から見れば、「戦争犯罪の加担者」です。まるで評価が違います。

 彼らはなぜ死んだのか、その死を代償にして私たち後続世代に何を贈り、何をやり残した仕事として課したのか、それらをわたしたちはどう受け止め、それを次世代にどう伝えてゆくのか、悲しいことにこのことについて合意はなされていません。

 この手の問題は、とてもデリケートで避けたい気持ちはあります。わたしはこう思っています。「日本の新生に先駆けて散る」この言葉を受け入れた多くの青年がいたこと、そして、戦後の平和と繁栄は彼らからわたしたちへの死を賭した贈り物であると。 

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