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『終わらざる夏 中』浅田次郎

 

yama-mikasa.hatenablog.com

 『終わらざる夏 中』読み終わりました。

 片岡の一人息子・譲は、信州の集団疎開先で父親の召集を知る。譲は疎開先を抜け出し、同じ国民学校六年の静代とともに、東京を目指してただひたすらに歩き始めた。一方、片岡ら補充要員は、千島列島最東端の占守島へと向かう。美しい花々の咲き乱れるその孤島に残されていたのは、無傷の帝国陸軍、最精鋭部隊だった。

 否応なく戦争に巻き込まれていく人々の姿を描く著者渾身の戦争文学、中編。

 占守島に向かう、片岡、菊池、富永の三人。この三人より一足早く、若い参謀がこの島に飛行機で降り立ちます。吉江少佐と言います。とんでもなく偉い人です。なぜこんな島に、こんな偉い人が?とみなが首をかしげます。現地に詳しい老准尉が、吉江参謀の視察に同行し詳細に説明します。穏やかな笑みで答える吉江参謀。老准尉は、長い軍隊経験からこの若い参謀の目の奥にある「何か」に気づきます。しかし、天上人である参謀に質問することなど許されません。

 ある夜、吉江参謀が老准尉相手に重い口を開きます。広島と長崎が新型爆弾によって壊滅したこと。ソ連が不可侵条約を一方的に破棄して満州に攻め込んできたこと。日本の負けが決定したこと。自分の役目は、この島に必ず攻めてくるであろうソ連軍と、戦わずに交渉すること。

 交渉を円滑に進めるために、語学堪能な男をこの島に向かわせたという。名前は片岡直哉。このことは国家機密であり、一部の人間しか知らない。もちろん本人も知らない。周囲にも悟られないよう、片岡には老兵を二人つけた。周囲に根こそぎ動員の召集だとカモフラージュさせるために。

 衝撃を受ける老准尉。そして、ついに三人が島に到着する。

 

 描写が美しいんですよね。わたしの下手な文章を読むより、実際に読んだ方がいいです。というより、わたしのこの感想は、この作品の価値を下げているとしか思えません。だったら書くな、という話ですが。なんていうんだろう、一文一文に気が入っているというか。前も書いたと思うのですが、こういう人を作家というんだろうと思わせてくれる作家さんです。

 もう一つ。疎開している片岡の一人息子の譲君が、六年生の女の子と疎開先をとび出して、徒歩で東京に向かいます。疎開先の生活が辛いとか、お母さん恋しいとか、そういう理由ではないのです。書けば書くほどこの作品を陳腐にしてしまいそうなので、これくらいにしておきます。

 片岡さんはどうなるんだろう。譲君は無事に東京に着くのかな?菊池さんは?今日からラストの下巻を読みます。