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「オレを誰だと思ってるんだ」症候群 『街場のアメリカ論』内田樹

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 昨年退職なさった方が、この4月から関連会社に再就職しました。その方(Nさん)は我が社では出世した方で、退職時には相当な役職についていました。

 しかし、そのぞんざいな態度と横柄な物言いで、部下からの信頼は一切ありませんでした。最終勤務日の退社時、その部署の社員が玄関口で並びお見送りするというのが我が社の恒例行事となっています。この行事、ある程度の役職についた方々だけにあてはまるもので、平社員にはありません(涙)。

 そのNさんの退社時、お見送りに参加した部下はほんの数人でした。それを見たNさん、くるりと方向転換し部署まで戻り「お前らどういうことだ!」と怒鳴りました。驚きましたよ。びっくりです。お見送りは義務ではありません。お見送りの人数が少なかったとしても、がっかりして退社なさるものなんです。

 そのNさん、仕事の都合で我が社にも時々顔を出します。元部下ばかりの部署にも顔を出すわけです。顔を出すのもすごいなあっと思うのですが、「よおっ」と声をかけまでかけるのです。

  もちろん、元部下の反応は薄いです。何しに来たんだと露骨に嫌な顔をする若手までいます。その若手の話は以前書きました。なかなかおもしろいやつなんですけどね。

yama-mikasa.hatenablog.com

 そうなるとNさん、顔色が変わります。顔を見ずともそのイライラが伝わってきます。まさか、また怒鳴りだすのでは?と思った瞬間、この4月から新しくその方の後釜に収まった新上司が「Nさん」と声をかけ、穏やかな顔で別室に連れて行きました。

 前ふりが長くなりました。内田さんは、こういう人を「オレを誰だと思ってるんだ」症候群と名付けこう説明しています。

 この「オレを誰だと思ってるんだ症候群」は、定年退職後の官僚やサラリーマンに顕著に見られる。それまでごく自然に享受していた社会的敬意が失われてゆき、「身の丈にあった敬意」しか受けられなくなったことに対する苛立ちの表現であり、これまた「ボケ」の最初の兆候として知られている。

 本当に上手に表現しているなあ、と感心しました。肩書をとったら「身の丈にあった敬意」しか受けられないわけです。それを受け入れられず、怒り狂う。そうかあ、ボケの兆候かあ。かわいそうに。

 内田さんは、ブッシュ時代のアメリカを対象にこの本を出しました。

 最近のアメリカの外交を見ていると、おのずから醸し出される威厳に人々が服するというより、すぐに「オレを誰だと思ってるんだ!」と怒鳴りだすので、それがうるさいから人々がしぶしぶ「はいはい」と言うことを聞いているような印象がする。

と書いています。

 今のアメリカはもっとすごいことになっています。