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「こだわる」「したいと思います」を使ってはいけないわけ 『書く力』 竹内政明

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使ってはいけない言葉

 池上彰さんは、NHKで記者やキャスターを歴任し今は大学の先生をなさっています。竹内政明さんは、読売新聞論説委員として活躍されています。この「言葉を生業にしている」お二人が書かれた文章執筆本。なかなかやります。

 私たちが、モノを書くとき避けた方がいい言葉や書きぶりを本書で多数あげています。そのうちのいくつかを紹介します。

『こだわる』 

 「こだわる」という言葉はなるべく避けた方がいいです。本書で竹内さんは、

 固執してはいけないときに固執するのが「こだわる」という言葉の本来の意味なのに、今は「妥協しないで取り組む」の意味で使われています。こうなってくると、本来の悪い意味で使う方が間違っているように見えてくる。だから私は最近、「こだわる」という表現そのものを避けるようになってしまいました。

と言います。

 「こだわる」という言葉が本来悪い意味なのに、最近よい意味で使われていることは私も知っていました。しかし、言葉の意味というのは時代と共に変わっていくものなので、社会が「こだわる」という言葉をよい意味で使うことを許容しているのであれば使っても問題ないかな、と思っていました。

 ここからです。そんな私に池上さんはこう言います。

「こだわる」を使えばそりゃ楽ですよ。言い換える手間がいりませんからね。

「言い換える」?どういうことでしょう。続けます。

「材料にこだわる」であれば「材料を吟味する」、「勝ちにこだわる」であれば「勝ちを最優先に考える」その都度言い換えるのは面倒だけれども、この手間のかかる厄介な作業が文章を練る楽しさだと思うんです。

 

 「こだわる」を乱発する前に、他の言葉を探せ、ということです。言い換えるとは、他の言葉を探すことだったんですね。食材なら「吟味する」、勝負ごとなら「最優先に考える」その方がすっきりします。言葉のもつイメージが広く深くなる気がします。次から「こだわる」という言葉を見たら、その場に適した言葉に言い換えてみましょう。

生き様

 

 

「生き様」:言葉に酔っている気がする。「生き方」でいい。

政治家に多いのだそうです。私はあまり使いません。「生き様」という言葉を選択するような場に置かれたことがないだけかもしれません.。今後使うこともないでしょう。

うちの嫁

 

「うちの嫁」:自分の嫁のことではなく、本来は息子の嫁のこと。

これまた私は使いませんが(嫁と言うのが恥ずかしいので)、初めて知りました。

したいと思います

 

「〇〇したいと思います」:二重に気持ちの表現が入っている。

これを使いたいときは、「〇〇しましょう」と言うとよいとのことです。

機会があった

 

「機会があった」:自慢が潜んでいる。

少し長くなりますが説明します。

 「機会」という言葉の背景には「あの人と会ったことがある」とか「あそこへ行ったことがある」などの自慢が潜んでいて、読者はそれを敏感に感じ取るものだと言います。そうかもしれません。

 では、「機会」という言葉はいつ使うのか。竹内さんは、読者が「へえー」と思うようなときに「機会」を使うと言います。

 例えば、

「読売の社員である私が、先日、築地にある朝日新聞社の社員食堂でカレーを食べる機会があった」

というように使う、と。これなら、読売の社員がわざわざ朝日に飯を食いに行ったの?となるでしょう、と。「読売の社員が読売の食堂でカレーを食べる機会があった」では、当たり前だろう、何をお前が食おうが知るか!となると。

 同じ理由で、「小池知事にインタビューする機会があった」という記事があったが、これもだめだと言います。なぜなら、それは政治記者であるお前の仕事だから当然のことで、パン屋が「パンを焼く機会があった」と言うのと同じようにおかしいと。なるほど。

 その他に、

「〇〇と思う今日この頃です」「〇〇と思うのは私だけだろうか」

という言い回しも避けるとのことでした。 

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