文章の書き方のハウツー本かと思って読んでみたのですが、癖が強い(笑)!。大学教授である石原さんが、目の前を通り過ぎていった多くの学生と、彼ら彼女らが石原さんに提出したレポートへの憤りをもとに、文章の書き方を微細かつ具体的かつ愛情たっぷりに書いた新書です。
そのいくつかを紹介します。
本を読め。
余った時間を携帯や合コンなどの遊びにすべて使うような学生は、今すぐ大学をやめなさい。大学はそんなバカどものためにあるのではない。大学の偏差値は大学や社会での実力を保証するものではなく、可能性を示すものにすぎない。必死に勉強しない限り可能性は開花しない。余った時間は図書館と本屋に行け。そして昼飯代を節約してでも本を買え。
読者の気をひくような題をつけろ!
「『三四郎』を読む」ってなんだ。こういうのは謙虚とは決して言わない。第一線の研究者はものすごく忙しい。こんなタイトルで読んでもらえると思っているとしたら、むしろ傲慢というべきだろう。
いきなり本文に入れ。話題を変えている場合ではない!
レポートはせいぜい20枚がいいところだ。そんな分量なのに「さて」とか「ところで」とか、ひどい場合は「それはさておき」などと書いて話題を変える学生がいる。こういうのは老人がやることで、若者が短い文章でやることではない。レポート程度ならたった一つのテーマを一気に論じるべきだ。「さて」なんて書いている場合じゃない。
どうですか、癖の強さが伝わりましたか。その他、
ホッチキスは右上に止めろ
・レイアウトはA4サイズで40字×40行ではなく、40字×30行がいい
- 左上ではなくて右上をホッチキスで止めろ
- 段落は五行以上十行以内ぐらいが美しい
などの外観から、
- 意見ははっきりと、提案は具体的に
- カルチュラル・スタディーズの論理
というような構成、また、批評と論文の違い、図書館の使い方、本の作り方、思考法など幅広く押さえられています。
私に一番響いた部分はここです。
論文で使ってはいけない言葉
新聞などのマスコミでよく見かける言い回しの中で僕が最も嫌いなのが、何かを批判して「~と言われても仕方あるまい」と収める言い方だ。どうしてこういう腰の引けた無責任な表現をするのか。自分の言葉で批判して「責任」を取るのが厭なのだろう。あるいは、自分の言葉で批判して再批判されるのが怖いのだろう。
もう一つ嫌いなのが、「便利になったけど、何か大切なものを失った」式の言い回しだ。「大切な何か」などと思わせぶりな言い方をして、その「大切な何か」の内容を明かさない点が嫌いだ。もちろん、文脈からそれが読み取れないことはない。それをこういう思わせぶりな言い方で言うのが厭なのだ。そして、こういう手垢の付いた語り口で文章を締め括るとカッコイイと思っているセンスが嫌いだ。まるで、面白がらせようとしてハズしてしまっているコマーシャルみたいではないか。
大学生の時読んでいたらよかったと思う本です。「学」というものに対して、もっと真摯に向かうことができたように思います。また、「論文執筆法」ですからアウトプットに力点を入れて書かれていますが、石原さんが言っていることを意識して書こうとすると、インプットの姿勢も自然と変わります。「書き方」だけでなく「読み方」も変わります。そして「聞き方」も「考え方」も変わります。
本当に良書だと思います。私は「思う」が多いです。書き直しましょう。