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戦争の傷跡 「ゼロの焦点」松本清張

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 縁談を受け、十歳年上の鵜原憲一と結婚した禎子。本店勤めの辞令が下りた夫は、新婚旅行から戻ってすぐに、引き継ぎのため、前任地の金沢へ旅立った。一週間の予定をすぎても戻らない夫を探しに、禎子は金沢へ足を向ける。北陸の灰色の空の下、行方を尋ね歩く禎子は、ついに夫の知られざる過去をつきとめる。

 

  「パンパン」という言葉を雑誌でちらっと見て、本作品を思い出しました。読んだことがあるので、本棚を探しましたが発見できず、アマゾンで購入して読みました。一昔前の典型的な推理小説です。懐かしい。

 新婚なのに、いきなりいなくなった夫を探す禎子が主人公。夫はどこへ行ったのか?生きてるのか?死んでるのか?禎子が、ところどころで読者のために立ち止まり、考えてくれるわけです。「今のところ、こういうことが分かっている。と、なると、夫はこうなっている可能性が高い。でも、そう考えると、ここがおかしい。よって、これを調べる必要があるぞ」というようにです。とにかくこの禎子の頭の回転がいいのです。私なんかは読んでいて、ああそうだったの?と感心してばかりいました。

    推理小説としては「どうだろう」いう感じでしたが、描写は素晴らしかったです。精緻な精緻な情景描写が、いつしか登場人物の心象風景と重なって物語がすすんでいきます。

    例えば、禎子が不安でどうしようもない時は、

 

禎子は窓によった。相変わらず窓には低いところに東京の町が海のように広がっていた。空の部分が多く、町はその空間に圧せられて沈んでいた。

 

    また、禎子が夫の失踪解明の手掛かりとなる写真に写った家を発見した時は、

おだやかな陽が、玄関のブザーを押している本多の背中にあたっていた。その明るい陽は、このきれいな家の白い壁にも、庭の植込みの木にもおりていた。

    このような感じです。

  再読しようとしたきっかけの「パンパン」。本作では重要なワードです。お得意のウィキで調べてみました。 

 

ンパンとは、第二次世界大戦後の混乱期日本で、主として在日米軍将兵を相手にした街頭の私娼街娼)である。「パンパン・ガール」「パン助」「洋パン」ともいう。

 

    それにしても、松本清張作品は、登場人物のすべての職業、職場、職業感覚、収入に至るまで緻密な配慮が効いています。そのことによって、登場人物の一人一人が明確な現実感をもって生きてくるように思います。

 本作品、10年近く前に映画化されています。私は見ていません。確かそのころ、清張作品の「駅路」が、石坂浩二深津絵里の主演でドラマ化されました。これは見ました。すごくおもしろかったです。こちらは、原作を読んでいません。「ゼロの焦点」の映画と「駅路」の原作を夏くらいまでには見たい(読みたい)と思います。

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