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書評家ってどうしようもない 「夢を売る男」百田尚樹

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 輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブジョブスに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は「いつもの提案」を持ちかける。「現代では、夢を見るには金がいるんだ」。牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。現代人のいびつな欲望をえぐり出す、笑いと涙の傑作長編。

 

 「笑い」と「涙」の傑作長編、とありますが、正直笑えませんでした。「冷や汗」と「涙」の長編です。

 この作品に出てくる丸栄社の敏腕編集長、牛河原が悪いやつで。本を出したいという人間の手伝いをするわけです。騙して?金をとるわけです。この牛河原によると、一般人は出版に何百万円もかかると思っているが、千部の本なら数十万円で作れる。そこをうまくさばいて、カモに金を出させるわけです。

「あなたには才能がある。この才能を埋もれさせるわけにはいかない」

「しかし、出版となると何百万円もかかり、断念せざるをえない」

「はっきり言いましょう。出版費用の一部をあなたにご負担していただければ出版に踏み切れるのです」

「これはうちとしても賭けです。勝負に出るということです。私は販売部を説得してOKをもらいました。鈴木さん、あなたも自分の作品に賭けてみませんか」

こんな感じです。この鈴木さん、意気に感じて金を出します。私もおそらくひっかかります。お金、払いますね。さらに追い打ちをかけることを牛河原が言います。

「知ってるか。世界中のインターネットのブログで、一番使われている言語は日本語なんだ。2006年に英語を抜いて世界一になったんだ。当時のシェアは37%だ。今ならもっと増えているだろう。70億人中、1億人ちょっとしか使わない言語なのに。日本人は世界で一番自己表現したい民族だということだ」

 

へこみます。

 では、ここからは、さらに私をへこました牛河原語録の数々をご紹介します。

 

「他人の作品は読みたいとは思わないが、自分の作品は読んでもらいたくてしょうがないんだよ」

「かなりの日本人が、自分にも生涯に一冊くらいは何か書けるはずだと思っている」

「小説なら、10万部くらい楽にいけると思っている」

 

極めつけはこれ。

 

「書評家って何ですか?小説を書いたこともない人が堂々と小説を評論していますが」

という部下に対して

 

「好き嫌いの感想で留めておけばいいものを、小説の技術論にまで口を出す。自分は何もかもすべてわかっているみたいな態度で、上から目線で作家の作品を評価する。そこまで小説がわかっているなら、お前が思う理想の小説を書いてみろよって言いたい」

 「小説家は実際の戦場で戦っている。下手な作品を書こうものなら、集中砲火を浴びる。くそ度胸だ。ところが書評家という奴は、絶対に弾が飛んでこないシェルターから銃を撃ってるんだ。書評家の中には、人の作品をボロカスにけなすことをウリにして金を儲けている奴もいる。戦場で戦っている作家の背中を後ろから狙ってな。絶対に撃ち返されないのを知っていやがるからタチが悪い」

 

 「自己表現したい」「自分の作品を読んでもらいたい」「上から目線で作品を評価する」「シェルターから銃を撃ってる」全部、全部私のことです。背中の汗が止まらないくらい、私のことです。でも、私は、作家のことを尊敬しています。10万部が凄まじい数字かは知っています。私は読めるけど、書けません。生産者ではなく、消費者です。それは十分自覚しています。だから、許してください。