読書生活 

本もときどき読みます

「悪人(下)」吉田修一 生きる 珠玉の名言集

 

 やってやるぞ、と思わされる名言を集めてみました。

 

f:id:Yama-Mikasa:20170224204847j:plain

 無理やり漢方薬の契約をさせられた房枝。その額263500円(涙)。

郵便局に連れて行かれて、怖くて声も出せなくて。

家に帰るとマスコミが家に大挙して押しかけて来る。

どうやら孫が殺人容疑で指名手配され、居場所がわからないらしい。

マスコミに追われ、ぼろぼろになりながら、契約のくやしさを思い、孫の祐一を思いつぶやく房枝のセリフ。

 

しっかりせんといかんよ。

逃げとるだけじゃ、なんも変わらんとよ。

待っとっても助けは来ん。

このままじゃ、配給の芋を投げられて、それでも黙って拾っとったあの頃と変わりゃせん。

がんばらんば。

馬鹿にされてたまるもんか。

もう誰にも馬鹿にはさせん。

馬鹿にされて、馬鹿にされてたまるもんか。

 

契約を解除しようとその事務所の前まで来た房枝。

祐一を、自分を奮い立たせるためにつぶやくセリフ。

 

祐一、あんた、どこにおると?

何があっても、ばあちゃんはあんたの味方やけん。

あんたも正しいことしなさいよ。

あんたも怖かやろ?でも、逃げたら駄目。

ちゃんと正しかことばしなさいよ。

ばあちゃんも、負けんとやけん。

逃げたってなんも変わらん。

逃げたって、誰も助けてくれんとよ。

 

事務所の扉を開け、やくざまがいの連中に思い切って言い放つ房枝のセリフ。

 

年間契約なんて、する気はなかですけん!

取り消してください!

うちにはそげん金は、なかですけん!

取り消してくれんですか!

これまで必死に生きてきたとぞ。

あんたらなんかに、あんたらなんかに馬鹿にされてたまるもんか!

 

娘(石橋佳乃)を無残に殺された石橋佳男が、増尾(犯人ではないのだが)にくってかかるも軽くあしらわれる。

その様子をじっと見ていた、増尾の友人、鶴田のセリフ。

 

雪の中、増尾の足にしがみついとったお父さんの姿を見て、生まれて初めて人の匂いがしたっていうか、それまで人の匂いなんて気にしたこともなかったけど、あの時、なぜかはっきりと佳乃さんのお父さんの匂いがして。

あのお父さん、増尾と比べると悲しゅうなるくらい小さかったんですよ。

正直、お父さんが増尾に勝てるとは思いませんでした。

対決するその場でも、その後の人生でも、きっと勝つのは増尾やろうと思いました。

でも、それでもお父さんに、何か言い返してほしかったんやろうと思います。

黙ったまま、負けんでほしかったんやろうって思います。

 

石橋佳男が、増尾の友人鶴田につぶやくセリフ。

 

あんた、大切な人がおるね?

その人の幸せな様子を思うだけで、自分まで嬉しくなってくるような人たい。

おらん人間が多すぎるよ。

今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい。

大切な人がおらん人間は、なんでもできると思い込む。

自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。

失うものもなければ、欲しいものもない。

だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。

そうじゃなかとよ。

本当はそれじゃ駄目とよ。

 

もう一度、増尾の前に立ちはだかり、最後の別れ際に一言。石橋佳男のセリフ。

 

可笑しかね?

そうやって生きていかんね。

そうやって、ずっと、人のこと、笑って生きていけばよか。

 

灯台で待つ祐一に思いをはせる光代のセリフ。このセリフが一番好きです。

 

祐一は灯台で私を待っている。

絶対に待っている。

これまでの人生でそんな場所があっただろうか。

私を待っている人がいる。

そこへ行きさえすれば、私を愛してくれる人がいる。

そんな場所があっただろうか。

もう30年も生きてきて、そんな場所があっただろうか。

私はそれを見つけたのだ。

私はそこに向かっているのだ。