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ナミヤ雑貨店の奇跡 なんて素敵な話

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美しい布

 ~悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが~。

 すごくおもしろいです。泥棒集団が、迷える人々から人生相談されるという?の話なのですが、とにかくおもしろいです。しかも、深い。読み終わってもなにも残らない、という本がありますが、これは違います。たとえて言うなら、一本一本の糸を「きれいだなあ」と眺めていたら、それらが縦に横に斜めにあれよあれよと重なり合って、最後には一枚の美しい模様の布になっていた、そんな感じです。誰もが思いつかない奇想天外で魅力的なストーリー、誰もが経験したことがあるけれど、うまく言葉にできない深い思い、これらを文章にしてあるわけです。

 いくつかの物語が交錯しています。どれも秀逸なのですが、私のお気に入りはミュージシャンを目指している若者の話です。その若者、実家は魚屋でして、その魚屋を継がずにミュージシャンを目指して家を飛び出すのですが、なかずとばずでうまいこと行かない。そうしているうちに、父親が体調を崩してしまいます。夢を追うか、それとも実家を継ぐか悩み、夢をあきらめることを決心します。そして、意を決して「魚屋を継ぐ」と言った若者に対し、父親がこう言います。

「お前、音楽はどうするんだ。逃げるのか。3年前、あんなにえらそうなことをいっておいて、結局はそんなことか。はっきりいっておくが、俺はおまえに店を継がせる気はない。どうしても魚屋をやりたいっていうんなら話は別だ。だけど今のお前はそうじゃない。そんな気持ちで継いだって、ろくな魚屋になれねえよ。何年か経ったら、やっぱり音楽をやってりゃよかったって、うじうじ考えるに決まってるんだ。俺にはわかる。で、その時になって、親父が病気で倒れたもんだから仕方なく継いだんだとか、家のために犠牲になったんだとか、いろいろと自分に言い訳するんだよ。何一つ責任取らないで、全部人のせいにするんだ。どうせ、言い返せないだろ。何か文句があるなら言ってみろ。家のことを考えただと?そういう立派なことは何か一つでも成し遂げてからいうんだな。おまえ、音楽を続けてきて、何かものにしたか?してねえだろ?親の言葉を無視してまで一つのことに打ち込もうと決めたなら、それだけのものを残せっていうんだ。それもできない人間に、魚屋ならやれそうだと思われたんだとしたら、全く失礼な話だ。おい、克郎(息子です)、よく聞け。お前の世話にならなきゃならないほど、俺も「魚松(店の名前です)」もやわじゃない。だから余計なことは考えず、もういっぺん命がけでやってみろ。東京で戦ってこい。その結果、負け戦なら負け戦でいい。自分の足跡ってものを残してこい。それができないうちは帰ってくるな。わかったな。」

 

 頑固おやじのべたな説教じゃないか、と思われますか(涙)。ストーリーの交錯具合の妙は私の筆力では伝えられないのです。この後、若者、大変なことになります。音楽で成功すると思いますか?それとも、失敗すると思いますか?音楽ではない別の道を選ぶと思いますか?正解は…どれも違います。ぜひ読んでください。そして、感想を教えてください。今から読む方がうらやましいですよ。