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「燃えよ剣」司馬遼太郎

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    新選組副長、土方歳三の活躍を描いた作品。「竜馬がゆく」と並び幕末ものの頂点をなす長編、とあるがその通りだと思います。ふぬけた武士ばかりだった幕末、農民の家に生まれ、その時代の誰よりも武士に憧れ、誰よりも武士のように生きた男。命を投げ出すことは誰でもでき、幕末にはそんな人間はたくさんいたようです。ただ、土方は違います。「もうだめだ、おしまいだ」何度もそう思ったに違いありません。でも、土方は玉砕をよしとしません。命を投げ出せば本望、そんな考えは微塵もありません。絶体絶命の縁でも本気で勝利を信じ、僅かな可能性を模索し行動にうつします。それは、死よりも辛く苦しい道だったはずです。五稜郭で最後の戦いに挑むとき、どんな気分だったんでしょう。 

   近藤は、京を追われた後も「百万石の大名になる」と言っていたようです。土方やその他の幹部に対しても、誰は十万石、誰は五万石が相当だろうなどと隊の士気をあげていたらしいですが、それを聞いた土方の心中はいかがなものだったかと思います。

 土方は最後の最後、五稜郭で一人ぼっちになります。榎本、大島、中島、人はいましたが仲間は一人もいません。孤立する土方。そんな中、榎本に降伏疑惑が持ち上がります。貴殿はどうなさる、と聞かれた土方が

「私にはむかし、近藤という仲間がいた。板橋で不運にも官軍の刃で死んだ。もし私がここで生き残れば」

 と答えます。そして、その夜亡霊を見ます。近藤勇が寝転んで肘枕をし、伏見で弾をで死んだ井上源三郎が、あいかわらず百姓じみた顔でぼんやりあぐらをかいて土方を見ています。

 その翌日、単身、五稜郭を出ます。

「名は何と申される」

新選組副長土方歳三

「参謀府に参られるとはどういうご用件か。降伏の軍使ならば作法があるはず」

「降伏?いま申したはずだ。新選組副長が参謀府に用がありとすれば、斬り込みにゆくだけよ」

 

5月11日です。連休前に、「もうすぐ土方の命日だよ」とつぶやいてください。

  

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